アパレル販売員・高山のブログ

現役アパレル店員としての体験をマンガにしています。

完璧な布陣だったはずの接客パターンが幼稚園児に破られてしまったときのこと

 

私は接客については、事前準備徹底派です。


これまで紹介してきたような商品知識をつける取り組みはもちろん、

その日の売り場も在庫も確認して、メンバーの配置も見て、

新作が入れば試着、ECサイトのチェック、

そして接客のシミュレーション。
休憩中もブランド名でインスタをハッシュタグ検索したり、

他店の売り場を確認したり。
さらに言えばメモ魔なので、接客は全てメモしています。

そのメモを見てさらに予復習。


その習慣は学生時代にキャラクターショップで

販売のバイトをしていた時も同じでした。


私が働いていたキャラクターショップには

売れ筋のぬいぐるみがありました。
世界的に人気のキャラクターなのですが...

仮に名前を「ベア太郎」としておきます(笑)
ベア太郎にはキャラクターとしての物語があります。
ベア太郎はくまの男の子、バナナが好きすぎて黄色くなってしまった、

音楽好き、家族や兄弟がいる、やんちゃで友達思い...など。


ベア太郎とその家族のぬいぐるみシリーズ「ベア太郎ファミリー」は

お店でも特に力を入れており、

必ず担当スタッフが1人ついて接客にあたるようにしていました。


私はもちろんベア太郎についても徹底勉強。
ベア太郎の物語をすらすら語れるようになり、

接客では「へー!」とお客様から感心していただいたり、

「ベア太郎のことこんなに知らなかった!感動しちゃいました!」

と言っていただいたりすることも。

家族のストーリーまで定型文化して語れるようになると、

セット買いしてくださるお客様もいらっしゃいました。
ベア太郎売上ランキングでも上位にランクインするようになり、

先輩からも「ベア太郎なら高山さんに任せられるよ」と褒められるまでに。

自分自身でもベア太郎の接客は完璧だと思っていました。

 

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そんなある日、ニコニコしながらベア太郎ぬいぐるみを見ている親子が。
恐らくお母様と、幼稚園生くらいの女の子です。
あれだけ楽しそうに見てくれているのだから、

いつも通りの「口上を述べれば」

きっと買ってくださるだろうと近づきました。


「こんにちは〜この子のお名前知ってる?」
いつもと同じ切り出しの私。
名前を知っていればベア太郎の裏話、知らなければ名前の由来から...

そう思っていましたが、女の子の答えは意外なものでした。


「きこちゃん!黄色のねこちゃんだからきこちゃんなの!」


........。


一体どういうこと?と固まる私。


「お友達がくれて、大事にしてるんだよね」

と続けるお母様。


どうやらお友達がくれたベア太郎ぬいぐるみを、

それをベア太郎と知らず名前をつけてかわいがっているようなのです。
ニコニコしていたのは、そのお友達との思い出や

「きこちゃん」との遊びについて話していたらしいのでした。


完全に自分の中に接客の流れのチャート図ができていた私は、

何を言ったら良いか分からなくなり、

引きつった笑顔で親子のそばに立っていることしか

できなくなってしまったのでした。

 


それまでの私のベア太郎接客のNGポイント、皆さんにはすぐに分かるかと思います。


私は
・商品の説明をパターン化しすぎていた。
・お客様からヒアリングして、同じ視点に立とうという姿勢がなかった
のです。

 

もし私がその女の子の「きこちゃん」の話を

同じ視点で聞いてあげられていたら、

「きこちゃん」の家族のぬいぐるみのおすすめや、

「きこちゃん」をくれたお友達にお返しのプレゼントのご提案が

できていたかもしれません。


この親子の時は思わぬ形で出鼻をくじかれましたが、

もしかしたらこれまでも

「すごい説明だな...でも今欲しいのはこのぬいぐるみじゃないんだよな...」

と思いながら聞いていたお客様もいたかもしれません。

 


これは極端な例でしたが、皆さんにもありませんか?

愛着があったり、本社のイチオシだったりして、

知識をたっぷり仕入れた商品。
この商品はすごいぞ、絶対これは伝えるぞ、と思えば思うほど、

お客様からヒアリングをしようという気持ちより、

伝えなきゃ!という気持ちが先立ってしまうのです。


お客様からすると

「すごいのは分かるけど、今はこれを買いに来たんじゃないよ...」

と思われてしまったり、

場合によっては「売りつけようとして一生懸命しゃべっているのかな」

と嫌に思われてしまうかも。

 


どうしたらそんな状態を防げるのか?
お店視点ではなく、お客様視点に立つことが大切です。


具体的な対策としては


・お客様が商品に触ったらすぐ話しかけではなく、

十分に店内を見られているか少し引いて見てから話しかける。


・自分が話すのではなく、お客様がお話され、

それに応えるという気持ちでいる。


・ずっとしゃべってしまっているな、などと思ったら少し離れて、

お客様が他の商品に関心を持つか見ている。


などがあるでしょうか。


これからこちらのブログで、ヒアリング方法や

「間」のとり方などについてもより深掘りしていきますね。


さて、完璧だと思っていたベア太郎接客を

女の子のお客様に破られてしまった私はその後どうしたか...?


何度もその日の会話を思い出して、NGポイントの洗い出し、

どうウォッチング・ヒアリングしたら良かったか検討、先輩スタッフの観察...

また予復習を徹底していました(笑)
自分視点ではなくお客様視点に立たなければ!という考えに至っても、

「事前勉強が大切」というスタンスは変わりませんでした。
自分の勉強方法だけは今後もずっと譲れなそうです。

 

(注・お客様や商品に関する情報には、

特定を防ぐためフェイクを入れています。)