アパレル販売員・高山のブログ

現役アパレル店員としての体験をマンガにしています。

「仮説」と「思い込み」の狭間

 

「バウンドコーデ」って知ってますか?


普通の洋服を組み合わせて作る、
キャラクターをイメージさせるようなコーディネートのこと。


例えば黒いTシャツに赤いパンツを履いたら、
ミッキーマウスバウンド。


コスプレとは違い、私服で手軽にできて
わかる人にはわかる程度のさりげなさが人気で、
インスタグラム利用者を中心に流行っています。

 


かくいう私も、遊ぶ時にバウンドコーデをよくしています。
元々テーマパーク好き、キャラクター好きなので、
テーマパークに行く時は必ず友達と揃えて
バウンドコーデをしています。

 


ある時は、ユニコーンのキャラクターの
バウンドをしていくことに。
ユニコーンなので、白を貴重にピンクなどのアクセントを入れよう、
服のテイストもいわゆる「夢かわいい」感じにしよう、と計画していました。


しかし、お互いの仕事や天気の都合があり
行ける日がどんどん限られていきました。
迫るチケットの有効期限...


「よし、明日行こう!」


ついに翌日しか行ける日がない!という段階になって決定。
お互いにバウンドの服装など用意していません。


「私今日休みだから買いに行ける!」


たまたまその日も休みをとっていた私が、
翌日着る「ユニコーン」の服を友人の分まで
用意することになりました。


その時、既に夕方。
1番近くのファッションビルまで急がなければ!


若干風邪気味だったため顔色も悪く(数年前の話です)

すっぴんで髪もボサボサ、Tシャツにジーパン、
スポーツサンダルで飛び出しました。

 


私の当時の私服は、フェミニンでややきれいめなものが中心でした。
なのでユニコーン調のかわいらしいものを仕入れられるようなお店は、
いくつか心当たりがあるのです。
行きつけのブランド目掛けてダッシュします。


ユニコーンっぽい...夢かわ...
テーマパークでも動きやすくて...
でも私でも友達でも似合うものじゃないと...
できれば今後も私服に使える...


脳みそをフル回転させながら
ふわふわレースのトップスを漁っていると、販売員さんが。


「なにかお探しなんですか?」
「友人とテーマパークに行くので、お揃いにする服を探していて...」


話半分に服を探し続ける私。


「これかわいいですよね、
クルーネ...丸首なのでカジュアルなボトムと
合わせやすいですよ〜」


ん?今クルーネックって言おうとして言い直した?
ですが今の私には聞いている余裕はないのです。
ユニコーンユニコーン...


「そちらもオススメです。
1枚だと透けてしまうので、なにか中に着ていただけると安心ですよ」


え、こんな編地の荒いカーディガン1枚で着るわけないじゃん。
まあいいや。
ユニコーン...ユニコーン...


「あ、これお似合いになりそうです。
少しカジュアルなので、お客様の普段の私服とも
合わせやすいですよ」


ここで違和感の正体に気がつく私。


こういうデザインって私の普段の私服にぴったりか、
むしろカジュアルすぎるくらいなんだけど...


...もしかして私、ものすごいファッション初心者だと思われてる?!


ふと鏡を見れば、くたくたのTシャツジーパンでひどい身なりの姿が。
すっぴんで髪もセットしていないと、
いつも以上に童顔でぼんやりして見えます。
普段からブラウスやタイトスカート、
ヒールの高いパンプスを身につけているとは思われ難いでしょう。 


それどころか先程の「テーマパーク」発言からして、
「ファッションのことを全く知らず、
友達とのお揃いにするために、頑張って不相応なお店に来た」
と思われているらしいのです。


まあ実際、本当におしゃれな人はそこらにある部屋着を
適当に組み合わせてもサマになるのかもしれませんが...。

 


喜ぶべきか分かりませんが、
この販売員さんは私を見下す態度をしたわけではなく、
あくまでも親切でこういった言動なのです。


恐らく私でも、販売員の立場であれば
同じような仮説のもとに行動してしまうと思います。


ただもしかしたら「お客様の普段の服装」と口にする前に
「普段からTシャツが多いですか」
などと聞くことができれば
「実は普段はこちらのお店でもよく買っていて」
などお話ができたのかもしれません。

 


販売員になるとまず言われるのが「お客様を観察しましょう」ということ。


もちろん観察=ウォッチングに基づく「仮説」を立てて
お声かけをすることは大切なのですが、
それが「思い込み」になってしまわないようにするためには、
上手な確認が必要なのです。


とはいえ難しいですよね...
改めて自分自身の接客のあり方を考えさせられた経験でした。

 

 

最後に余談ですが、先日あるスタイリストの方とお茶した時のこと。


以前から面識があり、年齢が一緒なのですが、
彼はタメ口で私は敬語。
この差はなんなんだ、まあいいけど。


それを話すと
「えー!ごめん、もっと年下だと思ってた!」
とのこと。


「だってほら、顔タイプキュートの人って
実年齢より若く見えるから...」


さすが、言い訳もイメコン知識に基づいていました...
(怒ってないよ)

 

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