アパレル販売員・高山のブログ

現役アパレル店員としての体験をマンガにしています。

無難なピアスチャーム

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以前、あるお店にピアスチャームを買いに行きました。


それより前に大切な友達が
シンプルなピアスをプレゼントしてくれたのですが、
そのピアスには自由にチャームを付け替えて使えるとのこと。
ピアスだけでもかわいいのですがせっかくなら、
と思いチャームを見に来たのです。


お店では全ての商品はショーウィンドウに入っており、
店員さんにお願いしないと直接見られないようになっていました。


これとこれとこれ...と、気になるものをいくつかお願いして
出してもらいました。


単刀直入に言ってしまうと...
その時の店員さん、あんまり接客に乗り気じゃありませんでした。
疲れていたんでしょうか、それとも新米さんだったのでしょうか。


「これはサファイアです」
「これはシンプルで合わせやすいです」
「これはトレンドです」
そんな言葉はぽつぽつ出てくるのですが、
親身になってくれている雰囲気ではないし、
こちらがなぜピアス本体ではなく
付属のチャームを買いに来たのかとか、
どんな色形のピアスに付けるつもりかとか、
そういったことも聞かれないのです。


なんだか気まずくなってこちらから
「うーんこっちの方が顔色に合いそうですかね〜」
などと聞いてみるも、
「かしこまりました」
と言って「合いそう」でない方を下げてしまうのです。


相談しただけでまだ見たかったんだけどな...
ていうか私、自分で自分に「これ似合うね!」って
言ってるみたいで恥ずかしいじゃん...


数回の言葉の往復の末、
ついに店員さんと私の間にたった1つのチャームが残ります。
押し黙る店員さん。


沈黙の気まずさに急かされながら、
網膜に刻まれたこれまで出てきたチャームの残像と、
目の前のチャームを比較します。


なんか色々片付けられちゃったけど、
まあ確かにこれが一番いいのかもな...。


シンプルで、友達がくれたピアスそのものの形を
引き立ててくれそうだったのです。


「うーんこれにしようかな」


そう呟くと店員さん、


「そうですね、無難ですし」


えっ...


その一言を聞いた途端、
「店員さんも疲れてるのかな」
「あんまりたくさん出してもらっても申し訳ないよな」
そんな思いが全部消えてしまって、


「今日はやめておきます」


結論が出た段階での心変わりに店員さんも訳が分からないようで、
「えっでもこちらが1番良さそうですよね」
などともごもご。
(ここで粘りを見せられるならちゃんと接客すれば良いのに...)


とにかく私もそれ以上居座る気にもならず、
チャームを買わずに退店しました。

 


私にとって大切なピアスにつけるチャームは、
特別なものでした。


なぜ買いに来たのかこちらの状況も希望も聞いてくれない、
満足いくまで比較させてくれるようなこともない、
「もしかしてこの店員さん、
私が買おうとしているものを大切に思ってくれていない?」
と薄々感じていた予感が、
「無難」の一言で固まってしまったのでした。


シンプルで癖が強くないものに対して
つい「無難」と言ってしまいがちですが、
誰かが数あるものの中から悩んで選んだものに対して
かける言葉ではないように思います。


代わりになんと言えばお客様のチョイスを尊重できるか考えてみたのですが、
「毎日一緒に過ごせる」とか
「何年経ってもかわいいと思える」とかだと

とても嬉しいかなと...。


とはいえ丁寧な接客の末に
「無難」という言葉だけがふっと出たのであれば
多少の違和感はあれ気にならなかったかもしれません。

 


私も自分が販売員をしていることもあり、
神経質すぎなところもあるかと思います。


周りの友達に話したところ
皆私の気持ちに深く同情してくれつつも、


「私だったら目当ての物が見つかったのだから買っちゃうな」


という友達が多かったです。
だよね〜


そんな中でひとり、興味深いことを言ってくれた友達が。


「ジュエリーショップって幸せな人ばっかり来るじゃん?
ラブラブで自分達の世界に入ってるカップルに何組も会ってたら、
私なら仕事中イライラしちゃうわ笑」


うーん、分かるような気もします。


いつもこのブログをご覧になっていて
コメントなどくださる方はとても優しい方が多いので、
イライラまではしないよ!とも思うかも。


でも、例えば毎日毎時間「2人の記念日なんです♥」
という方がいらっしゃったら...
自分や友達の記念品を選ぶような特別感は
薄れてきてしまいそう。

 


考えてみれば私にも思い当たります。


普通のお客様にとっては、
コートは1年に1着程度買うような特別なもの。


でも私達販売員は冬になれば大量のコートを目にし、
毎日ハンガーにかけたり外したり。
売れる様子も何度も何度も見ています。


果たして1枚のコートと向き合う時、
選び抜いて買ってくださるお客様と
同じくらいの気持ちでいるでしょうか。


そう考えると自信が無くなってしまいます。

 


チャームの件は私にそんな気づきをくれました。
今日も忘れずに向き合えているだろうか。
少なくとも、「無難」という言葉の使い所は考えるようになりました。


これから冬になり、ギフト需要も増えるでしょう。
ひとつひとつのお買い物、ラッピング...
全てに特別な気持ちで向き合えますように。

 


ところで、チャーム事件は1年ほど前なのですが
なんだかんだあり未だに買えていないのです。
今年のクリスマスプレゼントにピアスチャーム、募集しております。